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放送日 平成18年1月25日(mp3形式音声ファイルはこちら→)
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 放送内容は、著作権の保護を受けますので、個人でお聞きになる以外のご利用は出来ません。
ちょびっと
タイトル: 「千本コーポラティブ物語(その4)」
〜千本コーポを越えて〜
テーマ: 立命館大学産業社会学部教授 リム ボン氏をお迎えし、千本北大路のコーポラティブ計画から、さらに広がる構想についてお伝えします。
出演者:
リ:リム ボン氏 立命館大学産業社会学部教授
松:松岡 千鶴さん (NPO法人京都コミュニティ放送 放送局次長)
絹:絹川 雅則 (公成建設株式会社)
ちょびっと
 放送内容については、無断使用を禁止させていただきます。この件についてのご連絡はこちらまで。  
絹: :まちづくりチョビット推進室!
************************************************************************
絹: 皆さまこんにちは。
まちづくりチョビット推進室のお時間がやってまいりました。
この番組は、地元の建設屋の目から見た、京都の元気な“まちづくり”人のご紹介や、その最前線を紹介させていただいています。
いつものように、私のお相手は、当京都三条ラジオカフェのマドンナでいらっしゃいます、松岡千鶴さんです。
松: はい。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
絹: お願いします。
そして私、公成建設まちづくりチョビット推進室長、絹川がお送りいたします。
なお、この番組は公成建設の協力でお届けいたします。

さて、今日の番組タイトルでございますが、「千本楽只(らくし)コーポ物語その4」と題しまして、続き話。
4回目に入ります。
サブテーマが、「千本コーポを越えて」と。
そのさらに奥。
広がりを持ったプロジェクトだよと言う、テーマでお話をしたいと思います。
そして、今日の特別ゲストにお迎えしておりますのは、立命館大学産業社会学部のリム ボン教授でいらっしゃいます。
リムさん、よろしくお願いします。
リ: よろしくお願いいたします。
絹: リムさんの簡単なご紹介ですが・・・
KBS京都・・テレビ番組ですけれど、「どうする京都21」と言う討論番組があります。
そちらに、時々っていいますか、良くお出になってます。
そして最近の記憶に新しいのは、京都駅前の崇仁(すうじん)地区・・・同和地区でありますけれども、崇仁地区・・・この辺の都市作り、まちづくりに関して、新しい発言をされていますし、かなり硬派な発言もされて、非常にエキサイディングな番組が最近有りました。そのことを覚えています。 「行動する研究者」と言う名前・・・町の中に入って行かれる研究者と言うイメージを、私はリムさんに対して持っておりまして、そう言う面で尊敬する、京都の重要なブレーンのお一人だと思っております。
リムさんは、ニューヨークのハーレムのフィールドワークに行かれたり・・・
非常に幅広く活動されておりますんで、是非皆さん、リムさんの名前を覚えて下さい。

それでは、前回の復習を軽く致します。
千本北大路北東角、楽只エリアに、リム先生・・・リムさんと言わなきゃいけません・・600平米強の京都市の市有地があったんですね。
その市有地を・・市有地というか官有地ですね・・その上に定期借地権で7軒ぐらいの共同住宅を建てよう・・言うプロジェクトが起こっています。
これは、非常に、注目すべきプロジェクトだよ、と言う事を前回からずっと申し上げておりました。
京都市の住まいまちづくり課、それからそれに関わる人々の、非常に勇気あるプロジェクトだと。
非常に・・・どう言うんですか・・・注目すべきところだ、と言う風に語ってまいりましたけれども、実はリムさんが、そのプロジェクトにも深く関わっておられた歴史があります。 まず千本を、リムさんなりにどう読み解かれているとか・・リムさんにお任せいたします。
よろしくお願いします。
リ: 千本地区、それから先ほどご紹介有りました、崇仁地区・・・いずれもかつて「被差別部落」と言われたり、「同和地区」と言う風に言われてきた訳ですけれども、京都には他にも幾つもそう言う地区が有りますね。
その地区のほとんどが、住宅地区改良事業と言う、国の法律に基づいた再開発をずっとやってこられたわけですけれども・・・・ 私は・・千本に関わったり、或いは崇仁地区に関わったりする中で、こういう地区って言うのは京都市民にとっては、大変・・宝だと思うんですね。
絹: うーん。
リ: どういう事かと言いますと、約40年間に渡って、公共投資がずっと続けられて来たと・・・
かつては、所謂「不良住宅地区」と言われて、非常に環境が劣悪だったわけですけれども、部落解放運動に取り組んできた人々、或いは京都市、行政・・或いは国の法律と言うものを持って、地区の環境改善、その他・・診療所ですとか、学校ですとか、コミュニティセンターですとか、様々な施設を作ってきたわけですよね。 それが、今となって見ますと、京都のかなり・・拠点となるような地区に・・有りまして、ここをまちづくりの一つの拠点・・・周辺の地域住民と一緒に、その地域をうまく活用していけば、京都のまちづくりのパワーは、もっと強化されるのではないか、と言う視点で、ずっと関わってきた訳です。
絹: 松岡さん。今、リムさんのコメント聞いて、ビックリされませんでしたか?
松: うーん、ビックリと言う・・事はないです。
絹: あのねぇ。
松: はい。
絹: 実は僕はねぇ、初めてこのお考えを聞いたときに・・
松: はい。
絹: 驚天動地とまではいきませんけども、自分の常識の逆だったんですよ。
「ほわぁっ!そんな考え方が有るの?」と言う風にして驚いた。
例えば同和地区だとか、被差別地区だとか言われるところは、なかなか注目されてこなかった。
大きな再開発だとか、そう言うこともなされずに・・・実は、私たちあんまり意識してなかった。
特に、東京から京都へ帰ってきて、崇仁地区だとか見ても・・意識に・・何故か京都市民の意識には上りにくい地区。
でもそこを、リムさんの分析によると「宝物」・・・宝の山だ、と。
なぜなら、これまで40年間に渡って、コミュニティ施設だとか診療所だとか、いろんな物が整備されてきている。
あと少し、何か導火線に火がつけば、京都市が大きく変わる起爆剤になりうると言う、そう言う考え方をお持ちなんですね。
これは・・・非常に私はショックだったんですね、実は。
リ: 例えば、西大路三条のところに三条地区があるわけですけれども・・同和地区が。
ここのまちづくりなんかは、もう、かなりその辺進んでまして、ですね・・
絹: はい。
リ: 地区のいろんな施設を、周辺の朱雀学区のいろんな自治連合会の人達と一緒にですね、地域に解放して、高齢者の福祉サービスなんかに取り組んでいますし・・・
もっと言うと、その地区では福祉事業に関するNPOを立ち上げていますね。
絹: はい。
リ: 様々な活動も、既に始めております。
ですから、今、絹川さんおっしゃいましたように、私やっぱり、これまでの京都市民と言うのは、同和地区に対して意識に上らないと言いますか、「見ようとしない」から、見ないわけですね。 しかし一旦そこを見てみると、すごく魅力的ですよ。
是非皆さん、関心を持っていただければと思いますね。
絹: あのぉ・・・そうなんですよ。
まぁ私、地元の建設屋ですけれども、建設屋の常識から言っても、あまり魅力的な土地に映らなかったんですよね。
ところが、そうじゃないという・・この読み解き方は・・本当に180度、物の見方を変える、と言うところです。
そして、千本の楽只のプロジェクトに話を戻しますと・・・・
千本北大路の楽只地区も同和地区と言われて、改良事業がされてきたわけですが、リムさんと千本のお関わりと言いますか・・かなり古くから、あそこにフィールドワークに入られて、その延長線上で今度の楽只のコーポラティブハウス:定期借地権で京都市の土地を借りて、民間の人達が行おうと言う、有る意味画期的なプロジェクトが起こっている、と言う風に僕は理解しているんですけども。 千本とリムさんの関わりをもう少し・・・
リ: はい。
絹: お願いします。
リ: 今から約10年前ですけれども、千本のまちづくりに取り組んでいる、みなさんがですね、住まいの歴史を勉強しようと、言うことでですね、私に「住まいまちづくり講座」10回のシリーズで・・
絹: はい。
リ: やろうと言うことで、地元の人達と一緒に勉強始めて・・・
で、その時に楽只地区とその周辺地区が、人口や環境やコミュニティの状況がどうなっているかって言うのを、周辺地域のPTAの人達とも一緒になってですねぇ・・
絹: はい。
リ: タウンウォッチングをしたり・・
絹: い。
リ: 地区診断をしたり。
絹: はい。
リ: それから、そのまちづくり運動をこれからどうするかと言うことを、しばらく一緒に、やらせていただきました。
絹: 10回も?
リ: はい、そうです。
それでですねぇ、その中で一つ、地元の方の要望で、非常に多かったのが、現在は住宅、改良住宅という、まぁ市営住宅に皆さんお住まいなんですけれども・・
まぁ、40年前に出来たときは、非常に新しい団地で、皆さん夢を持ってそこに入居されたと・・・
しかし、公営住宅基準というのは、どんどんどんどん進化していきましてですね。
絹: はい。
リ: 今日的に見ると、もう老朽化してますし、非常に狭くて、なかなか住み続けられないという・・・
絹: はい。
リ: そう言ったことで、もう一度自分達がそれを・・・土地を買い戻して、分譲住宅を持ちたいという、意見もあったわけです。
絹: はい。
リ: で、その時にですね、果たして・・又土地を切り売りして、分譲住宅をするのが良いのか・・
絹: はい。
リ: 私はそうじゃなくてですね、かつて、地域の皆さんのご協力で、公共団体が土地を買収して、再開発に取り組んだ。
絹: はい。
リ: それをもう一度切り売りするのではなくて、土地はそのまま、公共・・つまり京都市が地主さんとなって、所有しつつですね、もう少し柔軟な住宅供給って言うのも有り得るんじゃないかと・・・ で、今日のキーワードはですね、「定期借地権付分譲住宅」・・
絹: はい。
リ: と言うことなんですけれども、実はこれは、今から15年ほど前、バブルが絶頂期の時にですねぇ・・・当時「狂乱地価」と言われまして、土地の価格がべらぼうに高くなりました。
絹: そうでしたね。
リ: その高騰した土地価格のせいで、住宅取得がなかなか出来なかったと・・
絹: はい。
リ: それでですねぇ、国の方で作られた法律なんですけれども、当時言われたのは、「地価を反映しない住宅供給」。
絹: はい。
リ: これ、どういう事かというと、土地だけで、1億も2億もしちゃうと、建物が建てられません。
絹: はい。
リ: そうじゃなくて、土地はですね、要するに借地のままで、建物だけを自分のものとして持つと・・
実はこれは、珍しい話でも何でも無くて、かつてはみんな、ほとんどがそうだったんですよ。
借地でね・・・
絹: 借家って、感じですか?
リ: 「借地、持ち家(もちや)」と言いまして・・
絹: はい。
リ: 土地は借りてますけども、建物は自分の権利があるということで・・
絹: あっ、「借地持ち家」。はい。
リ: それは、京都にもかなりありましたし・・
絹: はい。
リ: 今でも、東京には沢山残っているんですけども・・
絹: はい。
リ: そうやって、住宅を持つと・・・
もう一つ、その時に問題なのは、これまでの民法ですと、一旦土地をですね、地主さんが貸すと、半永久的に戻ってこないと・・・
これでなかなか、皆さん土地を貸したがらないと・・
そこでですねぇ、50年以上という期限を切ってですね・・
絹: はい。
リ: 50年経ったら、或いは60年経ったら、土地をもう一度地主さんに戻しますと・・
絹: はい。
リ: その間の権利を買う、と言うので「定期借地権付分譲住宅」という。
絹: はい。
リ: 私は、これこそ公営住宅ですとか、改良住宅ですとか・・こういうところに採り入れるべきじゃないかと・・
絹: うーん。
リ: ・・いう風に考えた訳です。
絹: はい。
リ: :と言うのは、地主さんが京都市という地方公共団体で有ると言うことは、まぁ・・非常に・・「安心して借りられる地主さん」なわけですね。
絹: えぇ、そうですね。
リ: 借りる方からすると。
絹: 何処のどなたさんか判らないんじゃなくて、しっかり「京都市さん」というのが・・
リ: えぇ。
絹: ・・おられますよね。
リ: そうですね。
そう言ったところに、その建物を建てて、50年、或いは60年。
絹: はい。
リ: まぁ、孫の代までは、一応・・・・
絹: はい。
リ: 生活が出来る。
絹: はい。
リ: と言うことで、住宅を持てばどうかと・・・・・
絹: はい。
リ: 言うことをですね、実は1997年の春ぐらいに、当時まだ・・今の国土交通省が建設省と言ってたときなんですけども・・ 絹:はい。
絹: はい。
リ: そこの住環境整備室の官僚の方が、千本のまちづくりの勉強をしたいと言うことで、来られまして・・
絹: はい。
リ: 一緒に、議論をしてまいりましてね。
絹: 中央から、千本に来てたんですか?
リ: えぇ。あの、千本のまちづくり、非常に注目されてましたので・・
絹: ほー。
リ: それで、勉強会をして、その時に、「定期借地権付き分譲住宅」みたいなものを・・
絹: はい。
リ: 改良住宅を建て替える際には、適用できるようにしたらどうか、という事を話してたわけです。
絹: はい。
リ: そうしますと、しばらくしまして、建設省の方から「東京に勉強会に出てこい」と・・
絹: はい。
リ: 言うことで、97年度の「住宅調査事業」という研究会があったんですけれども・・
絹: はい。
リ: その時に、各地の地方自治体の住宅室の方とか、或いは公団の方・・
絹: はい。
リ: そう言った人達と一緒に勉強会をして、改良住宅の建替に「定期借地権付き分譲住宅」の導入をしたらどうなるかという勉強会をしてたわけです。
絹: はい。
リ: 結論を言いますと、それが制度化されてですね・・
絹: はい。
リ: 京都でも千本の楽只地区のコーポラティブに繋がってきた、という背景があります。
絹: 97年?
リ: はい。
絹: 今、2006年。
リ: 9年前・・・
絹: ですね。
かなり古くから、関わってられると。
リムさん達・・或いは国土交通省、旧建設省の人達・・中央官僚が撒いた種が、着実に育ってる、と言うことが言えると思います。
これも非常に感動的な話ですし、皆さんご存じない事で有ります。
それと、私との共通点を言いますと、何度もお話ししてますように、私は自分の自宅を「定期借地権付き分譲」で、さらに「つくば方式」と言うやり方で、13戸の共同住宅に替えました。
これは二年前です。
自分がやったことを、公共の土地でやっている人がいるって言うことで、このプロジェクトに興味を・・共感をし、興味を持ってる訳ですけれども・・・
あぁ、なるほど、一個人がやるよりも、地方公共団体が地主となった方が、インパクト有るなぁと・・言うように正直に感じています。
我が家は、定期借地権・・60年ですけれども、建物は120年保つように設計しております。
ですから60年経った後、「譲渡特約」だとか、或いは「賃貸に変更」するだとか、そんなやり方も特約条項でつけておりますけれども・・・
まぁ、いろんなやり方がありますね。
そういう風に、その“千本”って言うのはですね、かつて中央からも注目されていて、リムさん達の・・・97年ぐらいからですか?・・ずっと、その動きが継続していると言うことですね。
リ: そうですね。
特に、何故、建設省の研究会でこういう事やろうとなったのか、と言うとですね・・
絹: はい。
リ: 実は、京都市の市営住宅だけでも、戸数で言うと2万戸ぐらい有るんですよ。
絹: はい。
リ: これは確実に・・古い物は当然ですけれども、新しい物でも、何十年か経っていくと、建替対象になってきて、いずれは建替をしなければならなきゃいけない。
絹: はい。
リ: これまでの公共住宅というのは、建物の除却も建設も監理も、すべて行政がやる、つまり税金で、それをやっていくわけですよね。
絹: はい。
リ: しかし、皆さんご存じのように、国も自治体も、もうそう言う、経済的な基礎体力がどんどん衰えていってると・・・言うときにですね、従来のような公営住宅をずっと造り続けられるのかというと、そうではないと・・
一方、住み手の側から言いますとですね、公営住宅の家賃って言うのは、所得に制限がありますし・・
絹: はい。
リ: 所得の高い人は住めない、或いは住んでる内に所得が上がると、家賃がどんどん上がって行くと・・
例えば、70平米の新しい公営住宅に・・年収800万とかある人ですと、10万円以上の家賃を払わなきゃいけない。
そうですと、まぁ分譲マンションを購入してローン組んだ方が、遥かに有利になって、ますます地域に住む人が高齢化、低所得化していくと・・・
ところが、定期借地権付き分譲住宅と言うのは、要するに、皆さん分譲住宅を買うわけですよ。
絹: はい。
リ: ねっ。
で、自分のお金で買ってもらうわけです。
絹: はい。
リ: ところが、さっき言いました様に、地価を反映しない、既に土地は公共の物ですし、もうほとんどの土地は・・・なんて言うんでしょうか・・返済が済んでる・・
絹: はい。
リ: 敷地ですのでね・・
絹: はい。
リ: 極端な言い方をすると、土地価格は無くって、考えて作れる訳ですよね。
絹: 地代は勿論・・
リ: 勿論、払いますけども・・
絹: 払う訳ですね。
リ: はい。それは、有る程度、極限まで低く抑える事が出来るということですね。
絹: そうですね。
リ: そうすると、基本的に建物代だけを考えれば良い。
絹: ふむ。
リ: そうするとですね、今・・・絹川さんなんかが・・プロフェッショナルですからご存じですけども・・例えば、集合住宅建てるときに、一坪幾らぐらいでしょうか?
60万円ぐらい・・でしょうか?
絹: そうですねぇ。
こだわったりすると、もうちょっと高くなりますけどねぇ。
リ: そうですねぇ。でも最低限で、考えますと・・例えば、60万円としても100平米で・・1800万とか・・
絹: はい。
リ: 2000万円以下で・・
絹: はい。
リ: 100平米の住宅に入れると言ったら、これすごい魅力な訳ですね。
絹: ねぇ。100平米って一つの目標ですもんね。
リ: ですねぇ。
ですから、それが、定期借地権付分譲住宅ですと、公営住宅基準に縛られずに、しかもコーポラティブですと好きなように造れる。
絹: はい。
リ: そうするとですね、例えば、2000万円台で100平米の住宅に住めるとなると、30代の人達でも、働き盛り達でも購入できる価格になります。
絹: うーん。
リ: 一方でですねぇ、じゃぁ、もう所得の無い高齢者の方ですとか、或いは生活保護世帯の方を追い出されるのかというと、実はそうではなくてですね・・
絹: はい。
リ: 100平米じゃなくて、60平米でもかまわないと・・
絹: はい。
リ: そうすると、1500万円以下で建てられると・・
絹: はい。
リ: 今度はそれをですね、京都市が買えば良いんですよ。
絹: うーん。
リ: 例えば、20戸の建物、一棟造ったと・・・
そのうちの15戸は定期借地権付分譲住宅で、皆さん、安くて魅力的な住宅を買ってもらう。
あと5戸はですね、京都市が買うと・・
絹: はい。
リ: しかし・・・例えば1500万円ぐらいの物を、例えば京都市ですと、長期的な返済で、それを購入するとすればですね、月々あたりの返済額って言うのはそう大きくない。
絹: うーん。
リ: そうしますと、うまくやれば、生活保護世帯の人達が受ける、住宅補助手当と言う物の枠内で、それが返済できる可能性がある。
絹: はい。
リ: そうすると、京都市は、ほとんど自己負担無くですね、生活保護世帯の住宅も供給できる。
絹: うーん。
リ: 一方で、働き盛りで、家を持ちたいと思っている人達も、無理せずに分譲住宅を購入できる。 こういった意味で、行政は税金をほとんど出すことなく、住み手の人達は自分達のライフスタイルに合った住宅を豊富にできる。 こういった意味で、まぁ、良いとこずくめと言いましょうか、非常に魅力的だ。
これは、同和地区の改良住宅だけではなくって、先ほど言いました、2万戸の公営住宅の今後の建替を考えますと、非常に普遍性を持ってくると・・
そう言った意味で、まず同和地区でこういったことを実験してみてですね、より一般化していくってことは、今後の課題だろうと思ってます。
絹: 普遍性を持つという、大きなキーワードを語られました。
松岡さん、今までの話、分かりますか?ちょっと難しいですか?
松: いえ。あの、その主旨、目的、何が良いのかと・・
絹: はい。
松: ・・言うことは、お話伺っていてよく判りました。
絹: はい。
僕は、一民間人が自分の、個人の所有する土地で、今おっしゃったような定期借地権型のコーポラティブ住宅を13人の方々とやってみたん です・・二年前。
その時の経験が有りますので、なんかすごくよく判るんですね。
そして、民間人がやったものを、さらに進化させて、より普遍性を持たせたプロジェクトに、こういう考え方はなると言うことを、 研究者であります、リム先生・・リムさんが、こうやっておっしゃってる、と言うことにすごい大切なことを感じます。
で、一つエピソードを申し上げますと・・・
私の自宅は、御所の西側に有ります。800平米弱の土地が有りました。
大正末期の建物を、私の曾祖父と祖父が建てておりました。
同じぐらいの広さで、従来型のマンションが建ちました。同じ様な御所の西側の場所です。
そちらは、単純な分譲で有りました。価格が大分・・やっぱり違いました。
私どもの方は、即日完売・・と言いますか、やっぱり土地の値段が反映しにくい為に・・・地代は頂戴いたしますけれども・・ホントに歩いて五分ぐらいあるところの、所謂、高級分譲マンションと、大きく性格を違えたと・・・
でも、コーポラティブで皆さんが非常にこだわった物を建てられて・・・
と言うことは、それに携わった・・プロジェクトに携わった入居者の人達は、その建物を大変大事にして下さると・・・
リムさんの論を借りますと、市営住宅の中にもコーポラティブと言う考え方は入れられると。
従って、市営住宅を大事にされる入居者が、一杯集まってくるんじゃないんですか?
リ: はい、そうですね。
絹: ということですね。
リ: はい。
絹: というように、非常に普遍性を持った話であります。
本当はもっともっと、リムさんから引っ張り出したいことがあるんですが・・・・
時間が無くなってしまうかもしれませんが・・ニューヨークでのですね、フィールドワーク・・・あっ、あと三分ぐらいですね。
フィールドワークのことを、少し触れていただけませんか?
今回のことと絡むと思うんですけど。
リ: はい。
私は、被差別部落のまちづくりですとか、公営住宅の建替って言うのを、大学院生の頃から研究してきたわけですけれども・・・
ニューヨークには世界的に有名な「ハーレム」と言うスラムがあります。
絹: はい。
リ: そこがもう廃墟となって、非常に危険な場所であったんですけれども、90年代の後半になって非常に町が良くなって、人口が回復したと・・・
絹: ふむ。
リ: その現場を、是非見たいと言うことで、98年の秋から、99年の秋まで一年間、ニューヨークに行きまして・・・
絹: はい。
リ: 毎日ハーレムを歩きました。
そしたら、廃墟になっ・・ホントに廃墟になって放置された建物が、ものすごく多いんですよ。
それが順次ですねぇ・・・改修されていって、住宅になっていってると・・
それは、やり方としましては、土地建物を地方公共団体が、つまりニューヨーク市とかニューヨーク州政府が持ってる物件をですね、地元のまちづくりに関わるNPOに1ドルで売却するんです。
絹: うむ。
リ: 1ドルですから、120円ぐらいで・・
絹: うむ。
リ: 土地建物、そのまま売却するんです。
絹: はい。
リ: それに補助金や寄附金をつけて、NPOが新しい住宅に建て替える。
そこに、低所得者の方ですとか、母子家庭の方ですとか、高齢者の方の入居をして、福祉サービスをすると・・そう言うプロジェクトが非常に盛んでしてね・・・
入居の倍率が、2000倍と言う、非常に人気のある住宅が沢山、出来ておりまして・・
そう言う団地を見たり、NPOを取材したりと・・・・言うことをしてきました。
絹: この辺は、もっと深めていきたいと思います。
次回、リムさんのお話は続きそうであります。
千本コーポ物語、その5へと繋いでいきたいと思います。
今日は、非常に普遍性のあると言いますか、私が興味を持ったプロジェクト、応援しているプロジェクトの、根っ子で関わっておられた、立命館大学のリム・ボン先生をゲストに、お話ししました。
いかがでしたでしょうか?
これからもですねぇ、元気な“まちづくり人”の紹介をしていきたいと思ってます。
又、リムさん来て下さいね。
リ: はい。
絹: 皆さんも、リム・ボン先生の名前を覚えておいて下さい。
京都市の大事なブレインの方のお一人であります。
松岡さんありがとうございました。
松: はい。ありがとうございました。
絹: リムさん、ありがとうございました。
リ: どうもありがとうございました。
絹: それではまた、お耳にかかれることを楽しみにしております。
まちづくりチョビット推進室でした。失礼します。
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