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放送日 平成23年1月22日(mp3形式音声ファイルはこちら→) 
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 放送内容は、著作権の保護を受けますので、個人でお聞きになる以外のご利用は出来ません。
ちょびっと
タイトル: 公共工事が日本を救う・・・京都大学 藤井聡先生をご存じですか?
テーマ: 今時、「公共事業が日本を救う」なんてタイトルの本があるの?
概要: とある会合でお会いする機会を得た京都大学 藤井聡先生の著書「公共事業が日本を救う」を題材に、建設業の現状について、絹川がお話ししました。
出演者:
 絹:絹川 雅則   (公成建設株式会社)
ちょびっと
 
 
   放送内容については、無断使用を禁止させていただきます。この件についてのご連絡はこちらまで。
 絹:  “まちづくり”チョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
  ************************************************************************
 絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最前線をご紹介しております。
いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
  さあ、平成23年明けました。
皆さま明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
番組の企画とゲストの続く限り、継続して放送させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

●今日は一人語りです
 絹: さて、本日のメインテーマ、タイトルですが、ちょっと刺激的なタイトルでお送りいたします。
「公共工事が日本を救う・・・京都大学 藤井 聡 先生 をご存知ですか?」と題してお送りいたします。
いつもでしたらゲストの紹介から入るのですが、今日は一人語りでいきたいと思います。
あるいはひょっとしたら藤井先生がこちらに来られているというような体で“新春仮想インタビュー”を試みるかもしれません。
さて、どんな新春第一発目の放送になるか、ご期待下さい。

御存じのように当まちづくりチョビット推進室は、地元京都の建設屋の目から見た京都のまちづくりというふうに、テーマを決めてずっとやってまいりました。
今どき『公共事業が日本を救う』などという題名の本があるの?ということで、びっくりいたしまして・・・これは文春新書で平成22年の9月に京都大学の工学研究科の藤井聡先生、40代の先生ですが、その方と出会ってショックを受けて、著書を取り寄せて読んだ、その辺からご報告をさせていただきたいと思います。

まさに世は民主党政権。
「コンクリートから人へ」という政策がなされて今、僕たちの業界、建設関係者は大変な事になっています。
我々業界の者が、大変だ大変だと騒いでも、なかなか信ぴょう性がないのですが、実際に京大の先生がこういう本をなぜ書かれたのかということを、今日は是非リスナーの皆さまにお届けしたいと思いました。
本当は藤井先生にゲストに来て頂きたいと考えておりますし、その交渉を継続していくつもりでおりますが、今日はこのスタジオにお越しいただいておりませんので、私がその露払いという形で進めさせて下さい。

さあ、それでは今、手元に文春新書の『公共事業が日本を救う』というタイトルの本があります。
藤井先生の言葉をなり変わって、皆さんにお伝えしていこうと思います。
ちょっといつもと違って形式が堅苦しくなるかもしれませんが、お許しください。

●公共事業不要論は間違っている?
 
 絹: 藤井先生は、土木計画学という学問を専門とされています。
土木計画学というのは、道路やダム、空港などのインフラ、社会資本についての政策論の研究や教育に従事されています。
京都大学の桂キャンパスの大学院で都市社会工学専攻ということで、教鞭をとっておられます。
藤井先生は1968年の奈良県生まれ、京大の土木工学科を出られて東京工大等の助教授、教授を経て、2009年から京大に戻って来られています。

先生の言葉を借りますと、実際のところ、先生は今までご自分の専門について「まじめに研究して、教育をしていればそれでいいと思っていた」と。
だからマスコミ報道や出版などで、少々専門的に不当でナンセンスな議論がなされていたとしても、研究者として公的に発言するのは自分の仕事ではないと思っていたと。
そういうふうに書かれています。
ところが、「公共工事は不要なんだ」という論調が徐々に目を覆うようなひどいものになっていった、そして専門的な見地から考えると、将来の諸地域と日本、地域住民と国民にとって必要であろうと思われるような事業が次々と中止になっていく様子を見るにつけ、なんとも言えない心持になってしまったと書いておられます。

我々建設関係者がこういうことを言うと「またか」というふうに思われるかもしれません。
でもなぜか、勇気ある京大の研究者である先生が「大学の研究室の中で研究ばかりしていてもどうにもあるまい」と思うに至った。
だから公共工事不要論、公共事業不要論がいかなる意味で、間違っているのか、今更ながらに本を一冊書いてみたということです。
世の中には無駄な公共事業がいっぱいで、どうしようもないからやめればいいんだ、事業仕訳けをすればいいんだというような風潮が満ち満ちております。
でも本当にそうなのかということを、藤井先生の著書から少し拾い読みでご紹介させて下さい。

●日本の公共事業費は本当に高いのか
 絹: 例えば、「コンクリートから人への嘘」というタイトルの一章がございます。
実は藤井聡先生を始めて出会ったのは去年、道路建設業協会の技術講習会で基調講演をしていただいた時のことでした。
その時に私は本当に目から鱗の、先生の説明を聞きました。

先生はおっしゃいます。
例えば公共事業を批判的に報道する論調の中で、しばしば日本の公共事業費が異様に高いというデータを見聞きすることがあります。
ここに引用されていますのは、2008年の暮れに出版された岩波新書、五十嵐先生、小川先生と言うお二人の共著の『道路をどうするか』という書籍からのデータですけれども、あるグラフがあります。
そのグラフは「道路、日本危機の元凶」という章の「特異な国、日本」という節に紹介されているものです。
このグラフを見ますと、ドイツ、英国、イタリア、カナダ、フランス、米国の国民経済に占める政府固定資産・・・(舌を噛みそうですが)、要はそれぞれの公共事業の対GDP比がとってあるのですが、日本の棒グラフの背丈が二倍以上になっています。
ところが、先生がこのデータをパッと見た時に「なにか変だな」と思われたそうです。
「どうもデータの加工があるな」ということです。
諸外国がナショナルアカウンツというOECD(経済協力開発機構)の統計からデータを引用しているのですが、日本のデータだけが国民経済計算という国内の発表資料に基づいているんです。
あれって、思われませんか。
おんなじデータを比べるのに、統計資料の出典が違うんだそうです。
それで日本もOECDの加盟国だから、OECDのナショナルアカウンツの統計値の日本の数字をあてはめると、グラフの印象がガラッと変わってしまったとおっしゃいます。
客観的なデータで見ると、少なくともここ数年の日本は公共事業費が異常に高い、特異な国でもなんでもなさそうなのだと。
でもなぜかマスコミ等々で喧伝される、あるいは現政権の政策策定の研究データとして用いられるのは、こういうデータであると。
なぜなんだろうということです。
あんまりこういう話をしても、リスナーの皆さんにはピンと来ないかもしれません。
でも他にももう一つ、お伝えしたいことがあるんです。
それどころか、もう少したくさんあるかな。

●森田実さんを覚えておいでですか?
 絹: 森田実先生って、ご存知でしょうか。
経済評論家と言いますか、かつてテレビなどで討論番組などによくお出になっていた方なのですが、少し前に『公共工事必要論』という本を書かれました。
その途端に森田実さんはマスコミ、ミニコミは言うに及ばず、色んなところから姿を消されました。
殆ど干されたそうです。
私は今、京都三条ラジオカフェというコミュニティFMでここ何年か、こうやってしゃべる機会を得ておりますが、大きな報道メディアについて、なんとなく変な感じを、正直言うと拭いされないんです。
このラジオカフェでは、本当の一般の市民の人が、自分の考え方、自分の声で、思いを語っておられます。
けれども1つ、例えばこういう公共的なインフラというのが、もう必要ないんだ、無駄なものはつくらないんだ、事業仕訳をするんだという形で、ダダダダという流れをうって、誘導といいますか、流れていっている。
それに反対の意見を、論理的に述べようとされた評論家、あるいは研究者の方(まだ藤井先生は手を挙げて発言を始められたところですが)、森田実先生という評論家の方は、そういう圧力を受けるということが起こったんですね。

●マスコミ・ミニコミの暴走
 絹: また藤井先生の著書から引用させていただきます。
週刊ダイアモンドという、よく読まれている雑誌があります。
これの、「ゼネコン消滅列島」という記事の冒頭に記載されている見出し文を紹介させていただきます。
「コンクリートから人へという民主党のキャッチフレーズは人々の心をつかんだ。今や悪とみなされた公共事業は、切り捨ての対象だ」
こういう見出し文があります。
週刊ダイアモンドですから経済誌として、ビジネスマンがよく読んでいます。
なるほどそうなのかと、みんな思います。
けれどです。
こうしたマスコミだとかメディアの1つの流れ、大きな風、風潮の原因を考える1つの糸口として、先ほど紹介した森田実先生の『公共工事必要論』の一節をまた引用してみます。
「土建業者を少しでも擁護する言論人を、マスコミ、ミニコミは徹底的に排除する。一旦、土建業者全てが腐敗しているわけではないと発言した途端、土建業界、自民党族議員、国交省の手先と位置付けられてしまう。マスコミ、ミニコミは恐ろしいほど偏見に満ちた世界なのである。今回、私自身を実験台に置いてみたが、予想通り厳しい体験をした。今もしている。もちろん公平でまじめな人が、マスコミ内部にも全くいないわけではない。しかし、そのような人は表舞台では活躍できないのが現状である。」
こういうある種の暴走というのを感じてしまいます。

●宮崎県口蹄疫の現場から
 絹: もう1つ、宮崎県の口蹄疫を覚えておいででしょうか。
私、実は先般、宮崎県に行ってまいりました。
たまたま宮崎県の同業者、建設業界の方々と語り合う機会を得ました。
その時やはり、今マスコミの方々が語らないことというのを少しお聞きしましたので、報告させて下さい。

覚えてられるでしょうか。
去年の8月21日に終息宣言は出ました。
ですけれども5月16日に国が乗り込んで来られた時には、本当に手がつけられない状況だったそうです。
29万頭以上に上る殺処分、「まさかここまでとは」と、口蹄疫に携わられた宮崎県建設業協会の渕上土木副委員長は言われました。
「10年前にも実は宮崎県で口蹄疫が発生していましたが、50頭ほど処分があったので、今回こんなになるとは思わなかった」
本当に現地で現場を見られた方でないと語れない事を教えていただきました。

1か所に250頭くらいを埋めるのだそうです。
5m50cmの深さの穴を四角に掘る。
一頭ずつロープでつりさげて、それから石灰をふって、ブルーシートで覆ってという繰り返しをする。
けれどもはじめは何もわからなかったので、後ろ脚を二本「ごめんね」と言いながら縛って重機で吊り下げてやったそうです。
ところが口から内容物があふれて、ものすごい匂いが辺りに充満したものですから、それからはもう「ごめんね」とは言わずに、前足だけを括って、前足一本でつりさげておこなったそうです。
ロープがいくらあっても足りない、資材はいくらあっても足りない、重機はいくらあっても足りない、で、実際に働かれたのは、地場の宮崎県の建設業界の人たちばかりだったのですが・・・
もちろん自衛隊の方も出張ってきておられましたので・・・
でも現地の人に聞くと、
「自衛隊の方より、建設業界の人たちが本当に頑張ってくれた」
「ボランティアの域を超えた、すさまじい修羅場のなかで、地域の建設に携わる人たちがやってくれた」

という声をたくさん聞きました。

●自衛隊の支援しか報じられず・・・
 絹: けれども日本全国の他の地域の方はどうなんでしょう。
自衛隊が頑張ったとしか報じられません。
新聞記者の人に抗議すると、「だってあなたたちはお金をもらったんでしょ」と言われるそうです。
本当に災害など大変なことが起きた時、防疫のために口蹄疫が感染しないために、他地域からは助けに来られない。
その時に地元で地域を守る建設産業者がどれだけ動くのかということを、宮崎県ではすごく経験されたという話を聞きました。

すごく重たくて難しい問題なので、私はきっちり整理できませんが、リスナーの皆さん、もしお厭でなければ、京都大学の藤井聡先生という名前、覚えていただきたいんです。
これからあちらこちらでひょっとしたら講演だとか、書籍が出てくるかもしれません。
そんな時に、本当の日本の社会資本整備について真っ向から研究されている先生が何と言われるか、是非聞いていただきたいと思います。

●京都のインフラは本当に大丈夫なのでしょうか
 絹: 私、1つだけ自分の経験を語ります。
丹波橋という橋があります。疏水にかかっている橋です。
その南側の枡形橋の耐震補強の工事をさせていただいています。
鉄骨の柱なんです。
小さい橋です。
上は自転車に乗ったおばちゃんがチリンチリンと走ったり、車が走ったり、その基礎の鉄骨の柱を、地震が来た時に大丈夫なように補強をするという工事だったんです。
塗装をワイヤーブラシなんかでゴシゴシと削り落としてきれいにしていたところ、現場の所長が「あっ」と驚いた。
鉄骨の柱の表面をきれいにしたら、向こうが透けて見えた。
大ショックで慌てて、設計指示されていた量の倍のつっかい棒(サポートと言いますけれども)で支えて、事なきを得た。

日本のインフラ、京都のインフラはきちんと整備されているんだ。
道路はもういっぱいで、不要な道路ばかりつくっちゃだめだと、色んな事を言われていますけれども、実は我々の足元にもそういうメンテナンス、次に来る東南海地震、南海地震などのためにインフラを整備していくという必要性を肌身で感じている研究者や職業人はおります。

そういう仕事の事は、なぜか大きく報じられない。
ですから大きなメディアの持つ傾向なのかもしれませんが、すごく一方的になる可能性がある。
その時に反対意見を述べる人、研究する人、それを封殺されないように、何とかせめてラジオカフェで機会を与えてもらっている自分が、そんなにたくさんおられないリスナーの方に少し伝えてみたいという思いで、今日の新春放談と言いますか、まとまらない嘆きというか呻きというか、そんなことになってしまいましたが、もう一回申し上げます。

『公共事業が日本を救う』藤井聡先生著、文春新書から去年の9月に出ました。
もし、ご興味のある方は、お手にとって頂きたいです。
そしてラジオカフェにご連絡頂きましたら、先着20名様に僕、この本をお送りします。
たぶん書店に並べても、平積みにはされない類の本だと思います。
でもその帯には
「“コンクリートから人へ”じゃ、国が滅びる!道路不要論は数字の詐術。財政赤字の犯人は公共事業じゃない。シャッター街化を止める秘策は実は専門家の中では通説があるんだ」
という、わかりやすく実例をひいて書いておられます。
また機会を得まして、藤井先生をこの場にも是非お招きしようと思っておりますので、よろしければまた聞いて下さい。
それと本当に、藤井聡先生というお名前を覚えていただけたら幸いです。

●現状を打破するために、常識を変える必要があるかもしれません
 絹: 最後にまとめです。
ゲストの人と語り合わずに、一人でしゃべると何かコントロールがつかなくなりますけれども、本当にこの日本を救うために、今の状況を打破するために、常識を少し変える必要があるのかもしれないという研究者に出会いました。
その人は藤井聡先生。勇気ある研究者だと思います。
こういう発言をするとあちこちから石が飛んでくるに決まっています。
でもやっている。それは藤井先生が本当の研究者だからだと感じています。

ということで、第一回目、拙い話になってしまいましたが、また次回からはゲストの皆さん、色んな方を呼んできます。
また聞いてやってください。

この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、そして京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りしました。
平成23年、今年もよろしくお願いします。
それではリスナーの皆さん、ありがとうございました。
拙い話で失礼しました。またお目にかかります。
ごめん下さい。
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