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放送日 平成20年10月1日(mp3形式音声ファイルはこちら→)
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 放送内容は、著作権の保護を受けますので、個人でお聞きになる以外のご利用は出来ません。
ちょびっと
タイトル: 「地域と共生する土地利用研究会(仮称)」のご紹介
テーマ: どんなに素敵なマンションを作っても、その中で引きこもりやDV(ドメステックバイオレンス)や独居死は起きるかもしれない事に気づいてしまった地主さんの物語の始まりです。
出演者:
絹:絹川 雅則 (公成建設株式会社)
ちょびっと
 放送内容については、無断使用を禁止させていただきます。この件についてのご連絡はこちらまで。
絹: “まちづくり”チョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
************************************************************************
絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくり人の紹介や、その活動の最前線をご紹介しております。
そしてこの番組は京都府地域力再生プロジェクトの応援と、公成建設の協力でお送りしております。
さて、いつものように番組のお相手は、当まちづくりチョビット推進室長、絹川がお送りいたします。

久しぶりに今日は一人です。ゲストの方がおられません。
今日の番組テーマですが、”地域と共生する土地利用研究会(仮称)”と題してお送りいたします。
堅苦しい漢字がたくさん並びましたので、「“地域と共生する土地利用”って、なあに?」と思われているかと思いますが、なぜこういう研究会を番組テーマに取り上げたかを、お話しいたします。

●Nさんとの出会い
絹: まず、人との出会いです。あえてNさんと申し上げます。
Nさんという方と出会いました。数年前です。御年55歳。男性です。
ということですから、私から言いましたら少しお兄さんですが、母上がご存命で88歳、父上はもうご他界されています。
この方は独身なんです。それで相談を受けました。
「絹川さん、君も知っているように、自分には相続する子どもがいない。だけど自分のXデイ(寿命が尽きる日)のあと、自分の家屋敷をお国に返すということが何か釈然としない。」という話になりました。
「ついては自分がいなくなった後、何か地域に貢献できるような形で自分の思いを残せないかな」という相談を頂いたんです。
それが、そもそもの”地域と共生する土地利用研究会(仮称)”の最初でありました。
今、始めてから4ヶ月くらいになるのですが、月に1回、京都市景観まちづくりセンターの小さなお部屋をお借りして、少ない時は4名、多い時は7名くらいで、定例の研究会をやっています。
このNさん、すごく奇特な地主さんだと思うんです。
ご存知のように、私は地元の建設産業の一端におりますから、10年にお1人ずつくらい、そういう土地を持っているお客様に出会います。
事実、ちょうど中京区役所の反対側あたりに小規模多機能施設“姉小路”というのがありますが、これは都市型の小規模な福祉施設で多機能なものになります。
例えばデイケアセンターだとか、元気なお年寄りのお住まいであるとか、配食サービスの基地であるとか、ケアマネージャーの事務所などが複合したものなんですが、そういうものができています。
実はそのプロジェクトも、ある社会福祉法人に地主さんが土地をご寄付なさったというところから始まったプロジェクトなんです。
実際にそういうものがあります。
ですから私一個人が仕事をしていて、10年にお1人ずつ、そういう方に統計的に会うということを申し上げました。

●“まちの縁側”覚えていらっしゃいますか?
絹: そしてそのNさんですが、お母様とお二人だけでお住まいになるには、かなり広い土地とお屋敷(古いものなんですが)をお持ちになっています。
「地域貢献の思いというのは、具体的には何なんですか?」とお聞きしたら、なんとなんと、この番組でも何回かご紹介していますが、“まちの縁側”に大変興味をお持ちです。
皆さん“まちの縁側”って、覚えてられますか?
“まちの縁側”と申しますのは、誰が来てもいいという、いわゆる「居場所」です。
昔、縁側というと、近所の人がふっと腰掛けて、ちょっとおしゃべりしてお茶を飲んで、また帰っていくという井戸端会議の場所であったわけですけれども、今、京都のあちこちで“まちの縁側”が出来ています。

例えば、私の住んでいる上京区の近所には『とねりこの家』という“まちの縁側”があります。
水無瀬文子さんという京都市の保健婦さんをされていた方が、ご自身の退職金でマンションの一室を買い取られました。
そこを“まちの縁側『とねりこの家』”として、朝の10時から4時までかな?基本的に月曜日から土曜日まで開けておられます。
そこでは子育て相談があったり、近所のお年寄りが集ってこられて、昼ごはんを食べられたり、それから落語会をやったりとか、色んな講習会があったりとか、とにかく色んな方が出入りして、交流をしておられます。

その運営も非常に不思議なんですけど、サポートする会員がボランティアでおられたり、安い年会費を払って「応援するよ」という人は、たくさんおられるんですが、基本的には招き猫の貯金箱があって、「私は今日、コーヒーをご馳走になったから」と、100円チャリンと入れて帰ったりとか、そういうものなんです。
それが結構、京都のあちこちに出来ているようです。

●自分の土地を地域のために
絹: 自分の土地をなんとか地域のために利用したい、Xデイ(=自分の死ぬとき)のあと、近所の人に役に立つようなプロジェクトにしたいという、そういう熱い思いを私に語ったNさんは、“まちの縁側”をやりたいというわけです。
そういうことを言う人が出てまいりました。で、実はハタと困った部分もあるんです。

ある民間の方で、そういう土地をお持ちの方がお亡くなりになる。
それを国に返さずに、寄付を、例えば特定の社会福祉法人などに寄付するということが、簡単なようで簡単ではないということがわかってまいりました。

土地の所有者がそういう寄付を起こすには、ぺラッとした紙一枚でいくのだそうです。
でも税金がかかりますよね。贈与税という非常に大きな税金がかかります。
その贈与税がかからないように、社会福祉法人さんがそれを受ける、あるいは地方政府たる、例えば京都市あるいは京都府が受ける、それから教育機関である大学が受けるということをする時に、ものすごい量の申請書類、資料が必要になるわけです。
そういうご経験のあった社会福祉法人の理事長さんに聞いたのですが、30cmほどの厚さの書類を作らなければならないというエピソードを教えてくださいました。
だから寄付を受ける方は、本気にならないとすごい労力なんだよということを、聞かせていただいたことがあります。
けれども何とかそのNさんの思いを形にしたいと思いながら、そういう研究会を続けています。

この研究会には、社会福祉法人で“まちの縁側”的な動きを地道になさっている方に御参画いただいておりますし、地域の大学でサテライトキャンパスというのでしょうか、『キャンパスを飛び出して、まちの中で研究の窓口をつくってみたいな』という夢を持っている大学の先生だとか、それから行政の関係者で、『こういうプロジェクトの作り方に興味があるな』という人なんかが、徐々に集まってくださっています。

♪小休止 Nob Kinukawa Album「Reunion」からPrelude♪

●具体的には、こんな事を考えています
絹: 「”地域と共生する土地利用研究会(仮称)”って、なんだ?」ということですが、前半でお話ししましたように、Nさん。
本当に奇特な地主さんです。一般のマンションだとか、共同住宅だとか、簡単にするのはできるのだけれども、それプラスアルファ“まちの縁側”機能と言いますか、地域の交流拠点というものを是非入れたいという夢を持っておられます。
その夢を形にするための研究会が”地域と共生する土地利用研究会(仮称)”です。
そしてさらに共同住宅の中に“まちの縁側”という空間ができますから、お住まいになっている、何階建ての建物ができるのか(4〜5階建ての建物ができるのか、あるいはもちろん3階にもできます)の何室か、10室になるのか、15室になるのか、そこにお住まいになる方が、その“まちの縁側”を核に、交流できないだろうかという企ても持っておられます。

普通のマンションだと、分譲にしろ、賃貸にしろ、共同住宅というのは、なかなか長屋的にはなりません。
オートロック等、鉄の扉を閉めてしまうと隣近所とはたまにしか挨拶しないよ、ということが起こりうるのが、ほぼ普通かもしれません。
Nさんは、前職が神戸で一級建築士をやっていたということです。
コープラティブということにも非常に興味がある。
ですから共同住宅、マンションなんだけど、コープラティブ的に、住んでいる人同士が「こんちは」とか「水戸から納豆が送ってきたから、おすそ分け」とか「餃子が送ってきたから」とか「柿が送ってきたから、おすそわけ」みたいなことが起こる、
そんな住まいができたらいいなと思っておられます。
しかも“まちの縁側”というものがそこにありますから、例えば狭い部屋で応接間がなかなか取れないけれども、「今日は友達が来るから、“まちの縁側”が空いてたら貸して」と、集会所のような形で、建物の上に住んでいる人たちにも利用ができる。
そんな姿ができないかなと望んでおられます。

また、その研究会にご参加いただいている福祉法人の方の関係では、例えばサテライト型特別養護老人ホーム的なものやデイケアセンターのそばに“まちの縁側”があれば、その施設に来ている若い子、例えば学生ボランティアみたいな人との交流も生まれるでしょうし、地域の大学の先生も、その“まちの縁側”構想に興味がありますから、『サテライトキャンパス的に使えないか』と思っておられるわけです。
そこで福祉施設の方と研究機関の方と地主の方と共同住宅の入居者の方で、いろんな交流が生まれるということです。

もちろんNさんは、ご存命の間から、そういうことに深く関わっていこうというおつもりなんですけれども、Xデイの後もそういうことが続くように、その仕組みを一緒に考えようよという、研究会の主人と言いますか、座長みたいな方です。
さてさて、これが本当に実現していけば、かなり面白いプロジェクトになると考えております。
そのために私はその運営事務局のような形を、今、務めています。

そしてもう一つ、面白いことがあります。
カーシェアリングということに興味のある人も、このプロジェクトに、ひょっとしたら参画してくださるかもしれません。

アパートだとかマンション駐車場の一つのブースを利用して、小さな電気自動車だとか小さな車を共同利用する。
しかもマンションの建物の住人だけではなくて、ひょっとしたら福祉法人の施設の方が利用する、あるいは近隣のマンションの人が登録して、その車を順番に使いまわすというシステムです。
このシステム、カーシェアリングサービスと言って、この頃コンピューターとウェブの力で以前にも増して、より手軽になっているらしいという話があります。
こうしてNさんの”地域と共生する土地利用研究会(仮称)”というプロジェクトに、色んなアイデアが集りつつあります。
そしてこれはおそらく二年以内に何らかの形になって発信できると思います。

●このプロジェクトを呼び水にして
絹: これはこれですごく素敵な、素晴らしいことなんですけれども、一つ考えてください。
Nさんて、1人だけなんだろうかと。
私は建設の仕事をしていて、20年に2人こういう方にめぐり合いました。
でも他にそういう方がいっぱいおられて、そういう「地域に貢献したいな」とか、「自分がいなくなった後も人と人との交流がうまく繋げられたらいいな」と思う、地主さん、京都の人の思いをちゃんと汲み取れるというか、実現させる仕組みが続けばいいなと思います。
ですからこのNさんの”地域と共生する土地利用研究会(仮称)”というものがパイロットプロジェクトになって、呼び水になって、「実は自分もそういうことを思っていたんだ」という人に繋がるといいなと思います。

そしてこういう研究会は、実はノウハウ研究会かもしれません。
ですから色んな方が出入り自由で、自分の持っている経験やノウハウを役立ててくれという人は、ゲストとして毎月お呼びしております。
「これが一民間人がされているということだけじゃなくて、何かの形で後押しするといいな、半ば公的なサポートが入るといいな」なんていうふうに思っております。

今日、”地域と共生する土地利用研究会(仮称)”というテーマで、お伝えしたかったのは、こんな面白い人が(面白いというよりも大した人です)おられるということ、そういう人の思いをなんとか実現させるための仕組みを、モデルとして作りたいということ、そして、そういうことを思っている人が数名集まっていますということです。
またこの番組を通じて、あるいはホームページ上で、情報を公開し、2週間くらいのタイムラグでアップしていきますので、もしご興味がありましたら、アクセスいただければ幸いです。

●もう一つのまちの縁側―“恒河沙”コミニテ食堂
絹: 告知コーナーというのでもないのですが、先ほどコメントいたしました“まちの縁側”、また一つ、すごい縁側を見つけました。“恒河沙(ごうがしゃ) ”さんと言います。
千本中立売東入る北側なんですけど、コミニテ食堂というのをなさっています。
NPO法人恒河沙母親の会というところがやっておりますけれども、 “恒河沙”というのは、ガンジス河の砂という意味でして、代表が福島美枝子さんです。
元々ひきこもりや不登校の子供達の自立支援ということで始められたのですが、不定期ですけれども、ホームページを見ていただいたらおわかりいただけると思いますが、コミュニティ食堂(愛称:コミニテ食堂)をやっておられます。
色んな方がお昼に集って、そこでお料理をお世話の方がしていて、確か今日のメニューは、野菜炒めとおうどんでした。
さて、居場所づくりに精を出している方々がおられます。
安養寺フリースクールというのも運営されています。
西賀茂の遊休の畑を安くでか、ただでか、お借りになって、自分達で作物を作って料理をされているという方々と場所です。
よろしければ覗いてみてください。

ということで、そろそろエンディングです。
この番組は「心を建てる」公成建設の協力と京都府の地域力再生プロジェクトの応援でお送りいたしました。
皆さん、またお耳にかかれることを楽しみにしております。
これからも元気な事例の紹介をやっていきますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
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